福島家庭裁判所 昭和54年(家)875号 審判 1980年2月21日
申立人 ○○市
主文
被相続人の相続財産である○○銀行普通預金(口座番号二八六三八番)三一七、二九一円を申立人に分与する。
理由
(一) 本件記録によれば
1 被相続人は各地を転々としていたらしいが、昭和三五年六月二三日○○市所在国鉄○○駅前付近路上に行き倒れとなつているのを通行人が発見○○警察署に保護され同日同市○○所在の○○○病院に入院、同三七年五月旧○○県○○○郡○○町所在の○○救護院に移り、同四三年一一月一八日肩書最後の所在地の県立○○病院に入院した。
2 被相続人は精神薄弱であつて、その本籍地も不明であつたところから同年四二年四月六日家庭裁判所の許可をえて肩書本籍に就籍した。
3 被相続人は同五三年八月九日、前記県立○○病院でてんかん重積発作により死亡した。
4 被相続人には主文掲記の相続財産があつたが、その相続人のあることが明らかでなかつたので同五三年九月七日家庭裁判所によつて相続財産管理人が選任され同管理人は民法所定の各手続を経たが、その債権者、受遺者、相続人は現われなかつた。
5 申立人(その設置する市福祉事務所)は、同三五年六月二三日以降被相続人に生活保護を適用して、生活資金を与え、また年末には市の年末一時扶助、市歳末助け合い資金を支給し、被相続人の療養看護に努めてきた、との各事実を認めることができる。
(二) よつて申立人は民法九五八条の三にいう被相続人の特別縁故者にあたるものと認められるので、相続財産である前記○○銀行普通預金三一七、二九一円を申立人に分与することにする。
(家事裁判官 福島重雄)